医療保険の仕組みを解説|知っておきたい公的保険と民間保険の違い

掲載日:2023/03/03

書類を手に取る男性

ケガや病気に備えて医療保険の加入を検討しているものの、そもそも医療保険とはどのような仕組みなのか、改めて気になる方も多いのではないでしょうか?

この記事では、公的医療保険と民間医療保険の仕組みや概要についてご紹介。

あわせて、医療保険の加入の必要性について考えるポイントも解説するので、悩んでいる方はぜひ参考にしてみてくださいね。

この記事のポイント

  • 公的医療保険のおかげで安心して医療を受けられる
  • 公的医療保険で不足する部分をカバーするのが民間医療保険
  • 民間医療保険に加入すべきかはライフスタイル次第

医療保険とはどんな仕組み?

パソコンで調べ物をする女性

そもそも医療保険には、「公的医療保険」と「民間医療保険」があります。まずはこれらについてそれぞれ見ていきましょう。

1-1.公的医療保険とは

公的医療保険とは、「国民皆保険制度」に基づき、国民が加入している公的な医療保険のことを指します。国民皆保険制度とは、国民が医療機関を自由に選び、安い医療費で高度な医療を受けるための制度です。

後段で詳しく説明しますが、公的医療保険は大きく「被用者保険」と「地域保険」に分けられており、それぞれの保険者(公的医療保険の運営者)に、自分の収入(標準報酬月額や賞与)に応じた保険料を納めることで、各種給付を受けることができます

1-2.民間医療保険とは

民間医療保険は、公的医療保険の給付で不足する部分をカバーする民間運営の保険で、加入は任意です。

民間医療保険の保険料は、保障内容や年齢や性別によって異なります。

それぞれの詳細について、公的医療保険、民間医療保険の順に詳しくご説明していきます。

2.公的医療保険の仕組みや種類

ここでは、公的医療保険の種類と給付内容についてご説明します。

2-1.公的医療保険の種類

保険証と、医療機関の診察券・領収書

公的医療保険には、会社に勤めている方とその家族が加入する「被用者保険」とそれ以外の方が加入する「地域保険」などがあります。被用者保険と地域保険の給付内容はほぼ変わりませんが、一部異なる場合もあります。

保険料は、被用者保険の場合には会社と折半して負担しますが、それ以外の公的医療保険の場合、保険料は全額個人負担となります。

公的医療保険の詳しい種類

保険者(公的医療保険の運営主体)により、公的医療保険にもいくつかの種類があります。

被用者保険

・全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)

主に中小企業に勤めている方とその家族を対象とした健康保険。

・組合管掌健康保険

主に大企業に勤めている方とその家族を対象とした健康保険。

・船員保険

船員とその家族を対象とした健康保険。

・共済組合

公務員とその家族を対象とした健康保険。

地域保険

・国民健康保険

市町村が保険者であり、主に自営業や農業、無職の人など会社などに勤めていない方が加入する国民健康保険法に基づく公的医療保険制度。

その他

・国民健康保険組合

同業同種の自営業者などで構成される国民健康保険組合が保険者となる国民健康保険法に基づく公的医療保険。

・後期高齢者医療制度

75歳以上もしくは65歳以上で障害を持つ高齢者が加入する公的医療保険制度。保険料・自己負担に加えて、現役世代の保険料から徴収している「後期高齢者支援金」および公費が原資。

2-2.公的医療保険の給付の種類

公的医療保険の給付には、「療養の給付」、「傷病手当金」、「出産手当金」、「出産育児一時金」、「埋葬費」、「高額療養費」などがあります。

療養の給付(※すべての公的医療保険) 

私たちは公的医療保険に加入し、医療機関に保険証を提示することによって、医療費の一部だけ負担すれば医療を受けられます。これを療養の給付といいます。

医療機関は、提示された保険証を確認して、毎月、診療内容をまとめたレセプト(診療報酬明細書)を作成・提出し、受診した方が支払った自己負担額以外の医療費について保険者に請求を行います。

なお、自己負担割合は、年齢によって以下のように決められています。

年齢別の医療費の自己負担割合

これにより、公的医療保険の加入者である被保険者とその家族で6歳から70歳の方は、医療機関を受診した際、窓口で医療費の3割を自己負担額として支払うのが一般的です。なお一部の自治体では、子どもの医療費を助成している場合もあります。

傷病手当金(※被用者保険と一部の地域保険)

傷病手当金は、被保険者本人が病気やケガの治療などで仕事を連続して4日以上休んだ場合、給与を受取れないときに給与の一部が4日目から最大1年6ヶ月支給されるものです。被保険者の家族は対象になりません。

出産手当金(※被用者保険と一部の地域保険)

出産手当金は、出産に際して仕事を休んだ場合、給与を受取れないときに給与の一部が受取れるものです。

出産育児一時金(※被用者保険と一部の地域保険)

出産育児一時金は、出産時に子ども一人について42万円受取れるものです。

埋葬費(※被用者保険と一部の地域保険)

埋葬費は、被保険者とその家族が亡くなったときに埋葬費を受取れるものです。

高額療養費

医療費の自己負担額が、所得に応じて定められた限度額を超えた場合、超過分が払戻されるものです。

原則として、いったん医療機関に自己負担額の全額を支払い、その後、高額療養費支給申請書を提出した後に保険者から払戻しを受けます。医療機関によっては、高額療養費支給申請書をあらかじめ提出しておくことで、医療機関には自己負担限度額を支払えばよいケースもあります。

高額療養費の仕組みについて

高額療養費の自己負担限度額について

高額療養費の自己負担限度額は所得により、以下のように定められています。

高額療養費の自己負担限度額について

なお、多数該当とは、高額療養費として払戻しを受けた月数が直近12ヶ月間で3ヶ月以上あったとき、4ヶ月目から自己負担限度額がさらに引き下げられるという仕組みのことをいいます。

3.民間医療保険について

民間医療保険は、公的医療保険でカバーできない医療費等の負担に備えるために任意で加入する民間運営の保険です。

公的医療保険でカバーできない費用の例

・差額ベッド代

入院時に、自らの希望で個室等を利用した場合、通常の大部屋との差額が発生します。差額ベッド代は公的医療保険の対象ではないため、療養中の姿を見られたくない場合は、差額ベッド代を自己負担する必要があります。

・食費・雑費

入院時の食費は、公的医療保険の対象外です。ただし、病状を考慮して1日あたり460円を超える食事が提供された場合、超過分については公的医療保険の対象となります。食費以外にも、入院時の日用品費などの費用が必要になることも覚えておきましょう。

・先進医療

厚生労働省の承認を受けて提供される先進医療には、数百万円の医療費が必要となる場合もありますが、健康保険が適用されません。

民間医療保険の加入を検討するときは「自分は保険で何の費用をカバーしたいのか?」を考えてみるのがおすすめです。

次から、民間医療保険についてさらに詳しく見ていきましょう。

3-1.民間医療保険にも種類がある

民間医療保険は大まかに以下の2つのタイプに分かれています。

「定期タイプ」

一定期間だけ、病気やケガによる入院や手術などの費用負担に対して備える

「終身タイプ」

一生涯、病気やケガによる入院や手術などの費用負担に対して備える

それぞれの特徴についてご説明します。

定期タイプ

一定期間だけ、病気やケガによる入院や手術などの費用負担に対して備える民間医療保険です。保険期間は保険会社や商品によって異なりますが、一定期間だけの保障であるため保険料が安いのがメリットです。

定期タイプは、一定期間終了後、健康状態に関わらず契約更新をすることもできます。ただし、同じ保障内容で契約を更新する場合、更新時の年齢で再計算されて保険料が上がってしまう点には注意が必要です。また、一定の年齢以降は契約の更新ができないという点も併せて知っておくとよいでしょう。

終身タイプ

一生涯、病気やケガによる入院や手術などの費用負担に対して備える民間医療保険です。保険料の払込みは、一生涯支払いを行う「終身払い」、と一定年齢で支払いが終了する「払済み」がありますが、支払い期間中の保険料は一定で変わらないのがメリットです。

なお、保障期間が長いため、定期タイプよりも保険料は高くなります。ただし、定期タイプの更新による保険料上昇を考慮すると、支払い保険料総額は定期タイプのほうが大きくなる可能性もあります。

定期保険と終身保険の比較表

4.民間医療保険には加入したほうがよい?

契約書にサインをしようとする夫婦

公的医療保険でカバーできない部分をカバーしてくれる民間医療保険。

加入したほうがよいのか、それとも加入しなくてもよいのかは、ご自身のライフスタイルと照らし合わせて判断をしていきましょう

例えば「専業主婦と子どもを扶養している夫」といっても、家庭によって民間医療保険加入の判断は異なります。

夫が会社員である場合、入院しても有給休暇を取得できる可能性がありますし、勤務先独自の福利厚生を用意している場合もありますので、民間医療保険に加入する必要性は低いかもしれません。しかし、「もし入院した際は個室を希望するが、医療費に使える預貯金が少ない」という人であれば、自己負担部分を民間医療保険でカバーしておく必要もあるかもしれません。

また、夫が自営業となれば有給休暇はありません。もし病気やケガをしてしまうと、仕事も止まり、収入も途絶えてしまいます。そうした事態に備えて、民間医療保険に加入しておいたほうがよい場合もあります

このように、民間医療保険に加入したほうがよいのかどうかは自分や家族のライフスタイルによって大きく異なります

年代、家族構成、性別、働き方などを考慮して、もしも自分や家族が入院することになった場合をシミュレーションしながら、自分に必要な保障は何かを考えてみるとよいでしょう。

5.まとめ

病気やケガに備えて民間医療保険に加入するか否かを迷っているとき、その結論を出すのは「公的医療保険の仕組みや給付内容」に加え、会社にお勤めされている方は「福利厚生」について、理解を深めてからでも遅くありません。

その上で、ご自身のライフスタイルを考慮して、公的医療保険や福利厚生だけでは不足しそうなものについて民間医療保険で必要な保障を選んでいくとよいでしょう。

また、入院時に必要な費用は医療費だけではありません。ご家族それぞれが入院した場合に、必要となりそうなことや困りそうなことを話しあってみる機会をもってみてはいかがでしょうか。

※上記は一般的な内容です。保険の種類や呼称、保障内容等は商品によって異なりますので、実際にご加入いただく際は商品詳細をご確認の上、ご契約ください。

【執筆・監修】

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キムラミキ

  • AFP
  • 社会福祉士
  • 宅地建物取引士

日本社会事業大学で社会福祉を学んだ後、外資系保険会社、マンションディベロッパーに在籍後、FPとして独立。現在は、株式会社ラフデッサン 代表取締役として、個人向けライフプラン相談、中小企業の顧問業務をお受けするほか、コラム執筆、セミナー講師、山陰放送ラジオパーソナリティとしても活躍中。

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