差額ベッド代とは?入院時の個室代や希望割合について解説!

掲載日:2022/07/12  更新日:2024/07/24

病院のベッドのイメージ画像

「病院の個室に入院すると、「差額ベッド代」という追加料金が発生します。こちらのコラムでは、差額ベッド代の基本的な内容や、差額ベッド代がかからないケース、差額ベッド代への備え方について解説します。

差額ベッド代で不安を抱えないためにも、ぜひ参考にしてください。

この記事のポイント

  • 差額ベッド代は全額自己負担で高額療養費も対象外
  • 同意をしていなければ差額ベッド代を払う必要なし
  • 差額ベッド代は民間の医療保険で備えるのもおすすめ

1.差額ベッド代とは?

差額ベッド代とは、通常の4人部屋や6人部屋と異なり、プライバシーや機能性がある快適な環境の病室(個室や準個室)を利用する際にかかる料金です。このような条件のよい病室のことを、公的医療保険制度では「特別療養環境室 」といいます。

差額ベッド代は病院が自由に決めることができ、一律ではありません。公的医療保険の適用外のため、一般的に費用は全額自己負担となります。

注意したいのが、差額ベッド代の計算方法です。1泊2日の場合、ホテルであれば1日分の料金ですが、病院では2日分の料金を請求されます。差額ベッド代を含め、病院で発生する費用が午前0時起点で計算されるので、例えば、15時に入院して翌日の10時に退院すると、15時~24時で1日分、0時~10時で1日分となり、2日分の料金がかかるのです。このようにホテルと病院とでは料金の計算方法が違うことを覚えておきましょう。

2.差額ベッド代の平均額

厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会(第548回)議事次第によると、2022年7月1日時点の差額ベッド代の平均は6,620円でした。

差額ベッド代の平均額(2022年7月1日時点)
部屋の種類 1日あたりの平均自己負担額
1人部屋 8,322円
2人部屋 3,101円
3人部屋 2,826円
4人部屋 2,705円
合計 6,620円
出典:厚生労働省|主な選定療養に係る報告状況

そして、1人部屋で最も多い料金帯は5,501円~8,800円、2人部屋~4人部屋で最も多いのは1,101円~2,200円です。

差額ベッド日額の割合

上記の表とグラフより、完全な個室である1人部屋と2人部屋以上の準個室とでは、料金に格段の差として表れています。設備や広さ、プライバシー性などにおいて、大きな違いがあることが影響しているといえるでしょう。

また、差額ベッド代は地域によって差があり、東京、神奈川、大阪などの都市部では高くなる傾向があります。また、差額ベッド料金額を個別にみると、最低額は50円、最高額は385,000円となっています。病院や部屋の種類によっても、料金が大きく異なります。平均額はあくまでも目安と考えておくとよいでしょう。

3.差額ベッド代がかかる病室の条件

差額ベッド代がかかる病室というと個室を思い浮かべると思いますが、2人部屋~4人部屋でも次のような条件を満たしていると特別療養環境室になります。

特別療養環境室の要件と差額ベッド代の説明図

【特別療養環境室の要件】

1. 病室の病床数は4床以下である

2. 病室の面積は1人あたり6.4㎡を超えている

3. 病床ごとにプライバシーを守るための設備を備えている

4. 特別の療養環境として適切な設備を有している

2~4人部屋では、ベッドの間に間仕切り家具を設置して準個室化することで、機能性とプライバシー性を高めていることが一般的なようです。

4.入院で個室を希望する人の割合

では実際に、どれくらいの人が個室を希望するのでしょうか。

山口大学医学部附属病院看護部によるアンケート調査によると、この病院に入院し大部屋を経験した患者65名中、35名が「大部屋がよい」、11名が「個室がよい」、11名が「わからない」と回答しており、8名が「無回答」となっています。

また、個室に関する意見としては、「音を気にせずゆっくり療養できる」「自分のいびきがひどいので個室がよい」という声がありました。アンケート結果からも、大部屋では音や室温、雰囲気に関するストレスを抱えやすい傾向があるようです。

音や室温などのストレスを減らすなら個室が適していますが、準個室と比べても料金は各段に高くなります。そのため、経済的な負担が大きいことから、個室を選択肢から外すという実情もあるようです。

また、個室を希望するかは、「病気によってケースバイケース」「体調の悪いとき、排泄行為が自分でできないとき、家族の付き添いがあるときは個室がよい」といった声もありました。病状や家庭状況によっても個室希望の有無は変わるといえるでしょう。

5.差額ベッド代がかからないケース

病院の個室のイメージ画像

特別療養環境室を利用すると必ず差額ベッド代がかかるのかというと、実はそうではありません。以下のような場合には、病院が患者に差額ベッド代を請求してはならない、つまり、「患者は差額ベッド代を支払う必要がない」と決められています。

5-1.病院都合で移動した場合

病院都合で差額ベッド、いわゆる特別療養環境室に入院させ、実質的に患者の選択によらない場合です。大部屋が満床で空きがないため、特別療養環境室を利用するケースが当てはまります

ただし、患者に対して特別療養環境室の設備や料金を明確かつ丁寧に説明したうえで、患者が納得して同意書にサインすれば、病院は患者に差額ベッド代を請求できます。

5-2.治療上必要とされて移動した場合

治療上必要な場合とは、救急や術後の患者で安静が必要、免疫力が低下し、感染症にかかる恐れがある、集中治療の実施や著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要がある終末期などが挙げられます。

5-3.患者が同意をしていない場合

特別療養環境室を利用するには、必ず患者の同意が必要になります。ここでいう同意とは、「料金などを明示した同意書に患者がサインをする」ことです。口頭のみの同意や、同意書の内容が不十分(例:室料の記載がない、患者のサインがないなど)である場合は、同意したことにはなりません。

注意したいのは、十分な説明を受けずにサインしてしまったときや、大部屋が空いていなくてやむを得ずサインをしてしまったときなどです。このような事情があっても、同意書がある以上は納得して特別療養環境室を利用したことになるので、差額ベッド代を支払う必要があります。

特別療養環境室を希望していない、利用に納得していないのなら、同意書に署名をしないことが大切です。同時に、大部屋を希望していることや、空きがでたらすぐに移動したい旨を病院側にはっきりと伝えましょう。

6.差額ベッド代は医療費控除の対象になる?

確定申告書のイメージ画像

1年間の医療費が一定額を超えたときに、所得から超えた金額を差し引くことができる制度が医療費控除です。医療費控除の対象になれば税金を減らせますが、差額ベッド代は医療費控除の対象になる場合とならない場合があります。

6-1.対象になる場合

国税庁の公式サイトには、「本人や家族の都合だけで個室に入院したときなどの差額ベッドの料金は、医療費控除の対象になりません」と記載されています。 つまり、病院の都合や医師の指示で特別療養環境室に入院したのであれば、その差額ベッド代は医療費控除の対象になるということです。

しかし、同意書にサインをしていると、自己都合で特別療養環境室を利用したと判断され、医療費の対象にならない可能性もあります。

支払った差額ベッド代が医療費控除の対象になるかどうか、まずは国税庁の相談窓口 や税務署に相談してみましょう。

6-2.対象にならない場合

繰り返しになりますが、本人や家族の都合だけで個室に入院したときなどの差額ベッドの料金は、医療費控除の対象になりません。よって、患者が希望して特別療養環境室に入院したときは、医療費控除の対象外です。

6-3.高額療養費制度は対象外なので注意

公的医療保険制度には、1ヶ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合、超えた分の金額が戻ってくる高額療養費制度があります。しかし、差額ベッド代はそもそも保険適用外の費用であるため、高額療養費の対象にはなりません。

7.差額ベッド代に備える方法

青い豚の貯金箱と車いすのイメージ画像

差額ベッド代への備えとして、民間の医療保険に加入する方法があります。民間の医療保険には、実費保障型と日額保障型があるので、それぞれの特徴をみていきましょう。

7-1.実費保障型の医療保険で備える

実費保障型の医療保険は、実際にかかった費用をかかった分だけ支払うタイプの保険です。差額ベッド代だけでなく、公的医療保険の自己負担分や自由診療の治療費、そのほかの諸費用(食事代、交通費、日用品代など)も幅広くカバーします。

主に損害保険会社で取り扱っており、基本的に定期タイプなので、更新するたびに保険料が上がっていく点には注意が必要です。

7-2.差額ベッド代を考慮して入院給付金を設定

日額保障型は、入院1日あたり1万円というように、設定した日額×入院日数の給付金が支払われるタイプの保険です。主に生命保険会社で取り扱っており、終身タイプが主流となっています。

4章の「個室を希望する人の割合」でお伝えしたように、個室希望の有無は状況によって変わる可能性があるでしょう。個室に入院したいと思ったとき、経済的な理由で諦めなくてもいいように、差額ベッド代を考慮して保障額を設定しておくことをおすすめします。

公益財団法人生命保険文化センターの「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」によると、入院1日あたりの自己負担額は半数以上が15,000円未満でした。なお、この自己負担額には、差額ベッド代以外に、治療費、食事代、交通費、衣類、日用品なども含まれます。

入院1日あたりの自己負担額の割合の円グラフ

入院給付金の設定額としては、最も割合の多い10,000円~15,000円程度が一つの目安になります。貯蓄に余裕があるなら日額を低くする、貯蓄の取り崩しをなるべく抑えたいなら日額を高くするなど、ご自身の状況に合わせて調整してみてください。

あわせて読みたい|医療保険の入院給付金とは?日額をいくらにするべきか金額の決め方を解説

8.まとめ

差額ベッド代は、数十円~数十万円と、病院や病室ごとに異なります。公的医療保険の対象外のため、かかった費用は全額自己負担で、高額療養費制度も利用できません。差額ベッド代などの自己負担額は貯蓄で準備するという方法ももちろん有効ですが、長期の入院になれば経済的負担が大きくなります。

高額な費用の発生を想定して、自己負担額の一部を民間医療保険で備えることも一つの手です。入院時に貯蓄を大きく取り崩さずに済めば、お金の心配が減り、ゆっくりと療養に専念できるでしょう。

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※上記は一般的な内容です。保険の種類や呼称、保障内容等は商品によって異なりますので、実際にご加入いただく際は商品詳細をご確認のうえご契約ください。

【執筆・監修】

さくま みどりの写真

佐久間 翠(さくま みどり)

ファイナンシャルプランナー/ライター。証券会社のオペレーターや生命保険会社でファイナンシャルアドバイザーを務め、その経験を活かして、2016年からフリーライターとしてマネー系記事を中心に執筆する。

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