高齢者に医療保険は必要?活用すべき公的制度や見直しのコツをご紹介

掲載日:2022/08/19

悩んでいる恒例の女性の画像

年齢を重ねるにつれ、体調面の心配事は増えていくもの。「昔入った医療保険でリスクをしっかりカバーできているのか」「今からでも医療保険に入ったほうがよいのでは」と悩まれる方も多いのでは?

そこで今回は、高齢者の医療保険の選び方や考え方についてご紹介します。

医療保険が必要かどうかの判断と、適切な医療保険の選択のために、ぜひ参考にしてください。

※この記事では、65歳以上を高齢者と定義します。

この記事のポイント

  • 医療保険を検討する前に公的制度を確認する
  • 保険適用外の費用は医療保険か貯蓄で備える
  • 高齢者は終身医療保険を選択する

1.高齢者には医療保険は必要?

高齢者に医療保険が必要かは一人ひとり異なる、というのが結論です。そのため、「周りの人が入っているから」「周りの人がやめたから」といった理由で医療保険に加入したり解約したりすると、無駄や不安が大きくなる恐れがあります。

では、医療保険の要不要はどのように考えればよいのでしょうか。

1-1.そもそも医療保険は重視すべき?

まずは、年齢ごとの受療率の変化を確認しておきましょう。下図は、入院と外来に分けた受療率を表したものです。

※受領率=調査日において、人口10万人あたりに対して入院・通院医療を受けている方の数

年齢別の受療率  

このように、加齢につれて病院にかかるリスクが年々高まることがわかります。いつ病気にかかるかは予測できないため、元気な方でも備えは大切です。

しかし、病気のリスクに「公的制度+保険」で備えるか、あるいは「公的制度+貯蓄」で備えるかは人それぞれ。経済状況や備えへの考え方から、自分に合った方法を選択しましょう。

1-2.医療保険を見直すときのポイント

現在加入している医療保険に対して、以下のような悩みや不安がある方は保険の見直しをするべきでしょう。

▼こんな人は保険の見直しが必要

・保障内容に不安がある

・毎月の保険料が高すぎる

また高齢者が保険の見直しをする際には、充実した公的医療制度によって、若いときよりも医療費の自己負担が少ないことを把握しておきましょう。

医療費には自己負担の限度額があるので、窓口で一旦1割~3割分の医療費を支払ったとしても、限度額を超えた部分は申請することで高額療養費として戻ってきます(下図参照)。

医療費の総額  

保障が過剰な場合は、入院給付日額を下げる・特約を外すなどの対応が可能で、そのぶん保険料を抑えることも可能です。逆に保障が不足していれば、保障の増額や特約の中途付加もできます。詳しくは、ご加入の生命保険会社にご確認ください。

2.高齢者向けの公的医療保険制度

書類と電卓

医療保険の検討や見直しをする際には、公的医療保険制度でどれだけ医療費をカバーできるのかを把握することが大切です。

というのも、医療保険とは「公的医療保険制度でまかなえない自己負担額」に対して備えるためのものだからです。

この章では、高齢者にかかわる公的制度である、「被用者保険・国民健康保険」「後期高齢者医療制度」「高額療養費制度」について解説していきます。

■高齢者の自己負担額は年齢や収入で変化する

窓口での自己負担割合は年齢や収入によって変化します。

「現役並み所得者」とは、70歳以上で世帯内に住民税の課税所得が145万円以上の家族がいる人(または標準報酬月額が28万円以上の人)のことで、70歳以下と同じ3割負担になります

また「70歳以上の1人世帯で年収383万円未満、2人以上の世帯で年収520万円未満」の場合は、申請により2割/1割負担になります。

窓口での自己負担額

2-1.被用者保険・国民健康保険について

「被用者保険」は会社に勤める方が加入する健康保険で、「国民健康保険」は自営業の方や会社を退職した方などが加入する健康保険です。扶養家族(扶養される人)は、扶養者(扶養する人)と同じ健康保険に加入することとなります。

70~74歳の自己負担額は2割ですが、現役並み所得者に該当する場合は3割負担のままとなります。

2-2.後期高齢者医療制度について

「後期高齢者医療制度」は75歳以上(一定の障害状態にある場合は65歳以上)の全ての方が加入する医療保険です。窓口での自己負担額は1割となりますが、現役並み所得者は3割負担となります。

2-3.高額療養費制度について

「高額療養費制度」とは、ひと月に支払った医療費が高額になったとき、自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度です。

年齢や所得に応じて限度額が定められており、事前に「限度額適用認定証」を発行すれば、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることも可能です。

<69歳以下>
適用区分 自己負担限度額(月額) 多数回該当の自己負担限度額
住民税非課税 35,400円 24,600円
~年収約370万円 57,600円 44,000円
年収約370~約770万円 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,000円
年収約770~約1,160万円 167,400円+(医療費-558,000円)×1% 93,000円
年収約1,160万円~ 252,600円+(医療費-842,000円)×1% 140,100円
<70歳以上>
適用区分 外来の自己負担限度額
(月額)※個人ごと
外来+入院の自己負担限度額
(月額)※世帯ごと
多数回該当の自己負担限度額
住民税非課税
(年金収入80万円以下など)
8,000円 15,000円
住民税非課税 24,600円
年収156万~約370万円 18,000円
(年間上限144,000円)
57,600円 44,400円
年収約370万円~約770万円 80,100円+(医療費-267,000)×1% 44,000円
年収約770万円~約1,160万円 167,400円+(医療費-558,000)×1% 93,000円
年収約1,160万円~ 252,600円+(医療費-842,000)×1% 140,100円

高額療養費制度には、さらに負担を軽減する仕組みもあります。

負担軽減の仕組み① 多数回該当

過去12か月以内に3回以上限度額に達した場合に、4回目から限度額がさらに引き下げられます。

※限度額は表を参照

負担軽減の仕組み② 世帯合算

複数回受診した場合や、同じ医療保険に加入している家族が受診した場合、それぞれ支払った自己負担額をひと月単位で合算することができます。合算により限度額を超えれば、高額療養費の支給対象になります。

※69歳以下は、21,000円以上の自己負担のみ合算可能

2-4.公的医療保険制度で補えない費用について

ただし、診療や治療にかかる費用が全て公的医療保険でカバーできるわけではありません

入院時にかかる食費や雑費、条件のよい部屋を利用した際の差額ベッド代、自由診療、先進医療の技術料など、保険適用外の費用は全額自己負担となります。

どのような治療を選択するかにもよりますが、思わぬ長期入院で費用がかさんでしまうこともあるでしょう。

貯蓄で対応できるなら医療保険は不要ですが、

・保険適用外の費用が不安

・貯蓄をできるだけ取り崩したくない

という方は、医療保険で備えておくと安心です。

3.高齢者の医療保険選びのコツ

タブレットを見る高齢の夫婦

この章では、高齢者が医療保険を選ぶ時のコツや注意点をご紹介します。

3-1. 高齢者の医療保険の選び方

高齢になってから保険に加入すると、一般的に、同じ保障内容でも若いときより保険料が高くなります。そこで、高齢者が医療保険を選ぶときは次の2点を意識しましょう。

高齢者の医療保険の選び方

① 終身医療保険を選ぶ

② 長期入院に対応できる商品を選ぶ

それぞれ詳しくご紹介します

① 終身医療保険を選ぶ

ポイント1つ目は、終身医療保険を選ぶこと

定期医療保険は更新すると一般的に保険料が高くなります。また、保障を継続できる年齢に上限があるため、更新し続けて一生涯の保障を確保するということもできません。

そのため、高齢になってから医療保険に加入するなら、保険料が変わらず、保障が一生涯続く終身医療保険が適しています。

② 長期入院に対応できる商品を選ぶ

ポイント2つ目は、長期入院に対応できる商品を選ぶこと。

医療保険に加入する際は入院給付金の日額や支払限度日数を決めますが、この日数を超えた部分の入院に対しては給付金が支払われません。

高齢になると回復力が落ち、入院日数が長期化しやすい傾向※があります。高額療養費制度があるとはいえ、入院が長引き、長期に渡って貯蓄を取り崩すことになると、金銭的にも精神的にも負担が大きくなるかもしれません。

そのため、支払限度日数を長めに設定できる保険だと安心です。

※参照:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」

3-2.医療保険の注意点

高齢者は年齢や持病により医療保険に入れないこともあります。保険会社ごとに引受条件や契約可能年齢の上限が異なるため、加入したい保険がご自身の年齢でも申込めるかどうか確認してください。

持病があっても加入したいときは、引受緩和型や無告知型の医療保険などを選択する方法もあります。しかし、さらに一般的に保険料は高額になり、給付金の支払い条件も厳しくなるということを覚えておきましょう。

3-3.がん保険の必要性について

医療保険とあわせて検討される人も多いであろう「がん保険」についても考えてみましょう。

がん治療には、先進医療や自由診療の抗がん剤治療などの選択肢もあります。これらは公的保険の適用がないため、高額な治療費が自己負担になります。

「お金の不安のせいでがん治療の選択肢を狭めたくない」「がんと診断されたら個室で治療に専念したい」などの要望がある方は、がん保険を検討するとよいでしょう。

ただ、総合的な医療保険でも、公的保険が適用されるがん治療に対しては給付金が支払われるので、すでに医療保険に加入している方は、追加でがん保険に入る必要性があるかよく検討することをおすすめします。

4.まとめ

年代に関係なく、貯蓄額や毎月の収入、どのように保障を確保したいかによって医療保険が必要な方と不要な方がいます。

公的制度でカバーされる金額が大きいので、「絶対に医療保険に入らなければならない」などということはありません。

それでもやはり医療保険が必要だと判断したら、終身かつ保障される入院期間がある程度長いものに加入するのがおすすめです。

この機会に、ご自身に合った備え方を検討してみてください。

※上記は一般的な内容です。保険の種類や呼称、保障内容等は商品によって異なりますので、実際にご加入いただく際は商品詳細をご確認の上、ご契約ください。

【執筆・監修】

さくま みどりの写真

佐久間 翠(さくま みどり)

ファイナンシャルプランナー/ライター。証券会社のオペレーターや生命保険会社でファイナンシャルアドバイザーを務める。その経験を活かして、2016年からフリーライターとしてマネー系記事を中心に執筆。

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