上皮内新生物とは?悪性新生物との違いは?ガン保険で保障される?
掲載日:2021/01/28 更新日:2023/03/16
ガン保険のパンフレットなどで目にすることの多い「上皮内新生物」と「悪性新生物(悪性腫瘍)」という言葉。この 2 つがどう違うのかご存知でしょうか。今回は上皮内新生物と悪性新生物の違いと、それぞれに対するガン保険の保障内容の違いについて解説します。
目次
1.上皮内新生物とは
上皮内新生物とは、腫瘍細胞が臓器の表面を覆っている上皮内に、とどまっている状態のものをいいます。ガンの一種ではあるものの、転移の可能性が少なく病変部分を取り除くことができれば完治可能な病気です。
1-1.悪性新生物との違いとは?
ガンは、以下の2つに大別されます。
・悪性新生物
・上皮内新生物
このうち私たちがよく耳にするガンは「悪性新生物」を指します。悪性新生物は、ガン細胞が細胞や粘膜の奥深くにまで広がっていて、他の臓器に転移するリスクが高い状態のガンです。一方で「上皮内新生物」はいわゆる「ガンの芽」であり、早期に発見できれば転移の可能性は低いガンを指します。
とはいえ、上皮内新生物から悪性新生物に進行する恐れがあることから、早期発見・早期治療が肝心です。
2.上皮内新生物のリスク
悪性新生物に比べて転移するリスクが低いとはいえ、ガンの一種でもある上皮内新生物。どのくらいのリスクがあるのか気になりますよね。以下で詳しく解説しているので、チェックしていきましょう。
2-1. 上皮内新生物にかかる割合は?
出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター「全国がん登録」(2019年)
実際にどのくらいの人が上皮内新生物と診断されているのか、国立がん研究センターの「全国がん登録」をもとに見ていきましょう。
グラフから見てわかる通り、上皮内新生物の罹患者数よりも悪性新生物の罹患者数の方が圧倒的に多いことが分かります。年齢が上がるにつれて罹患者数が増える悪性新生物に比べて、上皮内新生物は増加率がなだらかなのが特徴です。
とはいえ、年齢とともに上皮内新生物・悪性新生物ともにリスクが高まるということは事実といえるでしょう。
2-2.女性のほうが罹患の割合は多い!割合や部位は?
次に、男女による上皮内新生物への罹患リスクも見ていきましょう。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん登録)・全国年齢5歳階級別罹患数、部位、性別、診断年齢
一般的に、男性よりも女性のほうが上皮内新生物に罹患するリスクは高いといえます。その理由として「子宮頸ガン」や「子宮ガン」など女性特有の病気では上皮内新生物と診断されるケースが多いことが原因です。また、乳腺に生じる非浸潤ガンでは、上皮内新生物の段階であっても乳房全切除となるケースも少なくないため、乳房再建を行う費用なども想定した備えが必要といえるでしょう。
ガンのリスクに備えるためには、高額療養費制度や傷病手当金、障害年金といった公的制度を確認することはもちろん、民間のガン保険についてもさまざまな商品を比較検討し、上皮内新生物・悪性新生物に罹患した場合のリスクにどう対処するか考えておくことが大切です。
3.上皮内新生物は保険の保障対象?
上皮内新生物が保障の対象になるかどうかは保険会社によって異なります。
上皮内新生物が保障対象なのかを確認するときのポイントを以下で解説しますので、ぜひチェックしておきましょう。
3-1.保険会社によって保障対象かどうかが分かれる!
ガン保険における上皮内新生物の扱いは、大きく3つに分けられます。
① 上皮内新生物が保障されないタイプ
上皮内新生物が保障されない商品では、悪性新生物のみを保障対象としていて、上皮内新生物の場合では給付金などの保障が受けられないものが多いです。
上皮内新生物以外にも、皮膚ガン・非浸透性のガン等も保障の対象外に設定している場合があります。
② 保障額が悪性新生物より少ないタイプ
上皮内新生物の保障額が悪性新生物より少ない商品では、上皮内新生物も保障の対象ではあるものの、保障金額が悪性新生物よりも少なく設定されています。ガンと診断された場合に受取れる診断給付金が悪性新生物の50%、もしくは10%になる商品もあるので事前に確認しておきましょう。
③ 保障額が悪性新生物と同じタイプ
悪性新生物と同じ保障額を受取れる商品では、上皮内新生物の場合でも減額されることなく悪性新生物と診断された場合と同額の給付金が受取れます。前述の通り、女性のほうが上皮内新生物を患う確率が高いという背景から、女性はこちらのタイプのガン保険を積極的に検討しておくとよさそうですね。
もし、上皮内新生物が保障外の商品であっても、保険料払込免除特約やガン先進医療特約など、特約をつけることで保障内容に組み込める場合もあるので、チェックしておくとよいでしょう。
3-2.上皮内新生物の保障がある保険を選ぶべき?
上皮内新生物は早期発見・早期治療できれば、比較的短期間で完治するケースがほとんどです。そのため、治療が長期化しやすい悪性新生物に比べると経済的な負担は小さいといえます。
出典:全日本病院協会・診療アウトカム評価事業「医療費・重症度別・2019 年度年間集計」また、公的医療保険制度により自己負担割合は 3 割(6 歳〜74 歳)であるほか、高額療養費制度も利用できます。万が一、自己負担が高額になった場合でもそれらを利用することで最終的な自己負担額を抑えられるケースもあります。そのため、自己負担額から見れば必ずしも手厚い保障が必要とまではいえないでしょう。
とはいえ、先述したように女性の場合は男性よりも上皮内新生物にかかる割合が高いデータもありますので、女性の方は女性特有の上皮内新生物のリスクに備えるためにも、上皮内新生物も保障される保険に加入する、あるいは女性向けの保険への加入を検討してみてもいいかもしれません。
3-3.上皮内新生物は診断された後でもガン保険に加入できる?
上皮内新生物と診断された後、ガン保険に加入できるか否かは保険会社によって異なります。しかし、診断前に比べると加入の難易度が上がるのは事実です。上皮内新生物と診断された後でガン保険への加入を考える場合、まずは一般的なガン保険を視野に比較検討してみましょう。そこで一般的なガン保険の加入が難しい場合は、「緩和型医療保険」を検討するのもよいでしょう。
緩和型医療保険とは、通常の医療保険よりも加入条件が緩く設定された保険のことを指します。一般的な医療保険よりも保険料が割高になっている商品が多い一方で、昨今では保険料が比較的安い商品も見受けられます。そのため、加入条件をクリアできそうな中から自分のニーズに適した商品を選ぶとよいでしょう。
4.まとめ
上皮内新生物はガン細胞が上皮にとどまっている状態をいい、転移のリスクが低く、早期に治療すれば完治する可能性の高い初期のガンのことをいいます。ガンではあるものの、悪性新生物に比べると治療による経済的なリスクは小さいのが特徴です。
また、ガン保険の上皮内新生物への保障内容は、保険会社や商品によって差がありますが、上皮内新生物にかかる治療費はそれほど高くないため、加入優先度は低いといえるでしょう。ご自身の置かれている状況や毎月の保険料と照らし合わせて、加入すべきかどうか考えることが大切です。
※上記は一般的な内容です。保険の種類や呼称、保障内容等は商品によって異なりますので、実際にご加入いただく際は商品詳細をご確認のうえご契約ください。
【執筆・監修】
竹国 弘城(たけくに ひろき)
- 1級FP技能士
- CFP®
証券会社、生損保総合代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナー(FP)として独立。相談者の利益を第一に考え、自分のお金の問題に自分自身で対処できるようになるためのコンサルティングや執筆活動などを行う。
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※著者に記載いただいた内容をもとに一部チューリッヒ生命で編集しています。
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