医療保険とがん保険の違いは?選び方やどちらに加入するべきなのかを解説

掲載日:2020/02/04   更新日:2024/01/10

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この記事では、医療保険とがん保険がそれぞれどのような病気に備えられるのか、どのような保障内容なのか、支払限度日数などの制限があるのかなど、医療保険とがん保険の違いを詳しく解説します。

また、具体的な保険の選び方についてのポイントも紹介しますので、自身や家族のライフスタイル、将来の健康リスク合わせた保険を選ぶための参考にしてください。

医療保険とがん保険の違いを理解する上で重要なポイント

  • がん保険はがんに対する保障に特化した保険
  • 通常の医療保険でもがんの手術や入院は保障対象になる
  • がん保険でも対象となるがんの種類や治療方法が限定されることもある

1.医療保険とがん保険の違い

医療保険とがん保険の最も大きな違いは、保障の対象となる傷病の範囲です。一般的な医療保険では、がんを含めた病気やケガによる入院や手術を保障してくれます。一方、がん保険にはケガに対する保障やがん以外の病気に対する保障は無く、がんの治療を目的とした入院や手術などに特化して保障してくれます。どちらの保険が自分に合っているかを判断するために、まずは医療保険とがん保険の違いを理解することが必要です。

医療保険とがん保険の保障内容の違い
がん保険 医療保険
保障対象 悪性新生物・
上皮内新生物
(※一部例外あり)
病気(がんを含む)・ケガ
主な保障内容 診断給付金
(一時金)
入院給付金
手術給付金
通院給付金
入院給付金
手術給付金
その他の保障内容 治療給付金
がん先進医療給付金
女性疾病給付金など
通院給付金
先進医療給付金
女性疾病給付金
がん診断給付金など
免責期間 一般的には90日間 一般的にはなし
1入院あたりの
支払限度日数
一般的には無制限 制限あり
通算入院支払
限度日数
一般的には無制限 制限あり

ここから、各項目での違いを詳しく見ていきましょう。

1-1.保障の対象となる病気

医療保険とがん保険の最も大きな違いは保障の対象となる病気やケガの範囲です。医療保険は「がんを含む病気やケガ」の治療を目的とした入院や手術を幅広く保障しています。これに対して、がん保険は「悪性新生物・上皮内新生物(上皮内がん)」の治療を目的とした入院や手術などに特化して保障しています。この違いは、保険を選ぶときの重要なポイントでもあります。

具体的には、医療保険は心疾患や脳血管疾患、骨折などの一般的な病気(がんを含む)やケガを保障する一方、がん保険では悪性新生物や上皮内新生物のみを保障します。病気やケガなどのリスク全般を保障したい方は医療保険を、がんのリスクに対する備えを手厚くしたい方はがん保険を選ぶようにしましょう。

特に、中高年の方やがんの家族歴がある方など、がん罹患リスクが高い方はがんのリスクに特化して手厚く保障してくれるがん保険への加入を検討すると良いでしょう。

1-2.保障内容

医療保険はがんを含む病気やケガ全般の手術や入院による費用を保障してくれる保険で、一方のがん保険は、がんに対する保障が医療保険よりも手厚く、例えばがんの診断時にまとまった一時金が受け取れるだけでなく、がんの治療のための通院治療も保障されるなど、がんのみの保障に特化して保障してくれる保険です。

1-3.支払限度日数など制限の有無

医療保険もがん保険も、入院した場合に受け取れる「入院給付金」の保障がありますが、医療保険では60日、120日、365日など、1回の入院の支払い日数の限度があります。これに対して、がん保険の入院給付金では支払い日数の限度が無く、無制限で保障してくれるものもあります。この違いは、がんの治療は一般的な病気やケガと比べて長期間に及ぶことが多いため、長期間の治療に対応できるようがん保険が設計されているからです。

2.がん保険が必要な理由

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がんの罹患率は年齢が上がるほど高くなり、がん治療には多くの時間と費用もかかります。このようなリスクに対する保障として、がん保険が存在します。
もちろん、通常の医療保険でもがんの手術や入院を保障してくれますが、がんに対する保障に関してはがん保険の方が手厚い保障内容になっています。

2-1.理由1:がんの罹患率は年齢が上がるにつれて高まる傾向にある

国立がん研究センターによると、女性は30代前半からがんの罹患者数が増え始め、男性は40代から罹患者数が増え始めます。また、日本人の2人に1人が生涯でがんに罹患し、男性だと4人に1人が、女性だと6人に1人ががんで亡くなるとされています。特に男性では前立腺がんと大腸がんの罹患率が高く、女性では乳がんと大腸がんの罹患率が高いとされています。

がん罹患者数(全部位) 出典:国立がん研究センター 全国がん罹患データ(2019年)

このような高い罹患率を考えると、がん保険への加入は、自分だけでなく、家族にとっても重要な保障であるとも考えられるのではないでしょうか。例えば、両親をがんで亡くした経験がある方は、遺伝のリスクがあると考えて、がん保険への加入を検討するケースもあります。

2-2.理由2:がんの治療にはお金がかかる

がんの治療には、早期発見と治療を可能にするための検査費用や入院費、手術や通院のための治療費など多額の費用が必要です。

また、今やがんは働きながら治療する時代になってきており、治療も長期間におよぶことが一般的です。治療と仕事を両立させる上で、治療費だけなく生活費などにも影響が出ることもあるでしょう。さらに、がんの治療では先進医療のように保険適用外の治療法が選択肢に出てくる場合もあります。例えば陽子線治療は約265万円、重粒子線治療は約318.7万円かかり、この費用は全額自己負担になります。

このような状況を考えると、がん保険はがんの治療だけでなく、「がん治療による長期の経済的負担」にも備えるための重要な手段となります。例えば、がん保険の診断給付金などはまとまった金額が受け取れるため、がんの治療のための費用としてだけでなく、当面の生活費として使うことも可能です。

2-3.理由3:がん治療のスタイルが変化している

近年、がん治療での入院日数は短期化傾向にあり、従来の入院による治療から、通院で行う治療が主流になってきています。

外来と入院の患者数推移 *受療率:推計患者数を人口10万対であらわした数
受療率(人口10万対)=推計患者数/推計人口×100,000
出典:厚生労働省
*受療率:推計患者数を人口10万対であらわした数
受療率(人口10万対)=推計患者数/推計人口×100,000
出典:厚生労働省
出典:厚生労働省「平成29年(2017年)患者調査」

これは、新しい治療法の開発や医療技術の進歩により、通院のみでの治療や、短期入院と通院を組み合わせて継続治療を行うケースが増えているためです。

このように、通院によるがん治療が主流になっていることから、通院治療も保障されて、かつ給付金の支払い日数や支払い回数に制限がない「がん保険」は、近年のがん治療に合った保険といえます。

3.医療保険とがん保険のどちらに加入するべき?

ファイナンシャルプランナーと相談する夫婦のイメージ画像

「医療保険」と「がん保険」では、保障の範囲や給付内容が異なるため、契約者自身や家族のニーズに合わせて選ぶことが重要です。そこで、医療保険とがん保険がそれぞれどのような方におすすめなのか解説していきます。

3-1.幅広い病気に備えたい・コスパ良くがんに備えたい人は医療保険

がんを含む幅広い病気やケガに備えたいという方は、医療保険を選択しましょう。医療保険でもがんに罹患した場合は、入院や手術に対して保障が受けられます。がん保険よりも支払限度日数の制限があるなど、保障内容によってはがん保険と比べて限定的なものになってしまいますが、がん診断給付金、先進医療特約、通院特約などをつけることで、医療保険でもがん保険に近しい保障を受けることが可能です。

これらの特約をつけるメリットには、がん保険と医療保険を別々に加入するよりも、保険料を抑えられるという点があります。

3-2.がんの不安は大きいけれど、保険料は抑えたい人はがん保険

がんに対する不安が大きい方、保険料をできるだけ抑えたい方、一般的な病気やケガの治療費を支払えるだけの貯蓄がある方には、がん保険がおすすめです

がん保険では、がんの治療を目的とした入院や手術に対する保障だけでなく、がん診断給付金、がんの通院給付金などの特約を付けてより手厚くすることもできます。

一般的な病気やケガに対する保障よりも、がんのリスクに対する保障を手厚くしたいと考えているなら、医療保険よりもがん保険を選ぶとよいでしょう。

3-3.保険料がかかっても不安にしっかり備えたい人は両方加入

医療保険でも「がんに対する保障」はありますが、がん保険と医療保険では保障内容が異なります。そのため、両方の保険に加入することで、一般的な病気やケガのリスクと、治療が高額になりがちながんのリスクのどちらも備えることができます。

しかし、医療保険とがん保険の両方に加入する場合は、保障を重複させないようにすることが重要です。また、保険料の支払いが負担にならないよう、保障内容だけでなく、自身の経済状況を考慮することも忘れないようにしましょう。

3-4.自身の年齢に合わせて選択する

年齢という観点から、医療保険とがん保険のどちらに加入すべきか検討するのもよい方法です。がんの罹患率は年齢とともに増加するため、20〜30代のときは医療保険に加入し、40代、50代と年齢が上がってきたら、医療保険を見直してがん保険への加入を検討するという選び方もあります。

ただし、加入中の保険の保障内容の変更や追加などは、保険料に影響を与えるため慎重に検討する必要があります。

関連コラム|
20代でがん保険は必要なのか
30代でガン保険に入るべき?!必要性や選び方、費用について分かりやすく解説します!

4.医療保険・がん保険を選ぶときのポイント

女性と相談する若い夫婦のイメージ画像

医療保険とがん保険のどちらに加入すべきかを検討する際には、各保険の選定ポイントも理解しておきましょう。詳しくはそれぞれの選び方コラムをご参照いただきたいですが、ここではポイントのみご紹介します。

4-1.医療保険の選び方

次の4つの観点から医療保険を選ぶときのポイントを解説します。

保険期間と
保険料払込期間を選ぶ
保険期間は、一生涯保障の終身タイプと一定期間保障の定期タイプの2種類があります。終身タイプは保険料払込期間を終身払・短期払などから選択できます。
入院給付金の
タイプを選ぶ
入院日数に応じて日額が給付されるタイプと、入院日数にかかわらず一定金額給付される一時金タイプの2種類があります。
入院における
日額給付金・
支払限度日数を決める
入院1日あたりに受け取れる給付金の日額と、1入院における支払限度日数を30日型、60日型、120日型などの期間から設定することができます。
必要な特約をつける 先進医療特約や女性疾病特約など、特に不安を感じる部分の保障を手厚くするための特約を検討しましょう。

これらの内容を理解して、自身や家族のニーズに最適な医療保険を選ぶための参考にしてください。

詳しく医療保険の選び方や見直しのタイミングなどを知りたい方は、こちらのコラムをチェックしてみてくださいね。

関連コラム| 医療保険の見直し 選び方のポイントやタイミングについて

4-2.がん保険を選ぶときのポイント

がんは治療費が高額になるだけでなく、治療期間が長くなることが多い病気です。そのため、がん保険を選ぶ際には治療費を保障するための給付金だけでなく、治療期間中の収入の減少や生活費を補てんするための保障も重要となります。

がん保険を選ぶときのポイントは、主に5つあります。

保険期間と
保険料払込期間を選ぶ
保険期間は医療保険と同じく、一生涯保障の終身タイプと一定期間保障の定期タイプの2種類があります。終身タイプは保険料払込期間を終身払・短期払から選べるケースが一般的です。
診断給付金の
金額を決める
がんと初めて診断されたときに受け取れる給付金です。診断給付金の金額は50万円~200万円などで設定することができます。
通院給付金の金額を設定 がん治療のために通院した日数に合わせて受け取れる給付金です。1回の通院あたり3,000~1万円などで設定できますが、入院を伴う通院を保障するなどの条件があります。
入院給付金の金額を設定 がんの治療のために入院したときに受け取れる給付金です。入院1日あたり5,000~1万円などで設定できます。
先進医療や自由診療の
保障の有無
先進医療や自由診療を受ける際の費用にも備えたい場合は、加入するがん保険に先進医療特約や自由診療に対する保障があるかどうかを確認することが重要です。

詳しくがん保険の選び方を知りたい方は、以下のコラムもチェックしてみてくださいね。

関連コラム| がん保険の選び方を解説!人気の給付金額や特約も紹介

5.まとめ

医療保険とがん保険、これら2つの保険はどちらも入院や手術に対する経済的負担を軽減してくれるものです。それぞれの保険で保障内容や保険料が異なるため、医療保険とがん保険の違いを理解したうえで、どちらの保険が自分に合っているか判断する必要があります。

医療保険は、がんを含むさまざまな病気やケガに対して幅広く保障をしてくれますが、がん保険は「がんに特化した保障」となります。つまり、がん以外の病気やケガに対する保障はありません。その代わり、がんの診断時にまとまった一時金が受け取れる保障や、抗がん剤に対する保障など、医療保険よりもがんに特化して手厚く備えることができます。また、がん保険に特約を付けることで、がんの治療のための先進医療や自由診療に対する保障も備えることができます。

医療保険とがん保険のどちらに加入するかは、病気やケガを広く保障したいか、がん治療のみを手厚く保障したいかというニーズだけでなく、自分自身の健康状態や年齢、経済状況、両親の病歴、家族の健康状態なども含めて検討するとよいでしょう。

※上記は一般的な内容です。保険の種類や呼称、保障内容等は商品によって異なりますので、実際にご加入いただく際は商品詳細をご確認のうえご契約ください。

【執筆・監修】

宮里 恵の写真

宮里 恵 (みやざと めぐみ)

  • ファイナンシャルプランナー
  • M・Mプランニング 代表

保育士、営業事務の仕事を経て、ファイナンシャルプランナーに。
独身、子育て世代から定年後の方までお金に関する相談を受けて、16年目になります。主婦FPとして等身大の目線でのアドバイスが好評です。家計・保険・老後・相続などの個別相談を主に、マネーセミナー、お金の専門家として記事の監修、テレビ取材なども受けている。「人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。」

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