出産は医療保険適用?知っておきたい公的制度と費用の目安

掲載日:2022/09/05

出産を控えた女性の画像

結婚後、子供を授かりたいと考えるものの、出産にかかる費用がどれくらいかかるのか、公的医療保険の適用になるのか、民間医療保険に加入したほうがいいのかなど、出産のお金に関する不安や疑問を抱える方は少なくありません。
そこでこの記事では、将来出産を考えている方に向けて、安心して出産の日を迎えることができるように、出産にかかる費用の目安や、出産時に適用される公的制度、貯蓄や民間医療保険の備えの必要性について解説します。

この記事のポイント

  • 出産にかかる費用はおよそ50万円。医療機関によって差もある。
  • すべての出産の費用に公的医療保険(健康保険)が適用されるわけではない点に注意が必要。
  • 出産に民間医療保険で備えるなら、早めの対応が大切。

1.出産にかかる費用はいくら?

公益社団法人 国民健康保険中央会が調査した「出産費用の全国平均値、中央値」によると、出産にかかる費用は、全国平均値で505,759円、中央値は493,400円となっています。この金額目安は、下表の通り出産場所が「病院」、「診療所」、「助産所」によっても異なりますが、出産にはおよそ50万円程度の費用負担が必要となるといえます。

病院 診療所 助産所
平均値 511,652円 501,408円 464,943円
中央値 497,340円 491,300円 459,860円
出典:公益社団法人 国民健康保険中央会「出産費用の全国平均値、中央値」平成28年度

出産費用の内訳をみると、出産費用そのものである分娩料以外が出産費用のおよそ5割を占めています。そして、分娩料以外にも、新生児管理保育料、検査・薬剤料、処置・手当料、その他費用(産科医療補償制度、差額ベッド代、病院の食事代)が必要という結果になっています。

2.出産時に適用される公的医療保険と補助制度

帝王切開など異常分娩の場合は公的医療保険が適用されますが、すべての出産が、公的医療保険の対象なわけではありません。正常分娩の場合は、原則として入院費用等が公的医療保険の対象にならないため、全額自己負担となります。

一方で、通常の妊婦健康診査の経過が順調でも、場合によっては出産直前に帝王切開になる場合もあります。 また、公的医療保険以外にも活用できる制度もあります。

また、公的医療保険以外にも活用できる制度もあります。

2-1.公的医療保険が適用される場合とは?

出産は、原則として公的医療保険の対象外です。しかし、下表のような要因で医療処置が必要になった場合には治療、投薬、入院にかかる費用は公的医療保険の対象となります。また、通常の健診では健康保険扱いにならない超音波検査も、異常分娩の可能性がある場合の検査においては適用になります。

公的医療保険の対象となる出産
妊娠中

●重度のつわり
●異常分娩の可能性がある場合の検査(児頭骨盤不均衡、逆子、前置胎盤)
●子宮頸管無力症
●妊娠高血圧症候群
●前期破水
●切迫流産・切迫早産
●流産・早産
●その他の疾患

出産時

●陣痛促進薬の使用
●止血のための点滴
●吸引分娩
●鉗子分娩
●帝王切開分娩
●医学的対応の場合の無痛分娩の麻酔
●新生児集中治療室の利用
●死産

2-2.公的補助制度の活用

公的医療保険が適用とならない場合でも、以下のような活用できる公的補助制度もあります。そのため、出産費用の全額が自己負担になるということはありません。

妊婦健康診査の受診票

妊婦健康診査の費用は、原則全額自己負担ですが、自治体が検査費用の一部を助成しています。妊娠届を提出すると、妊婦健康診査の受診票が交付されます。公費負担の助成回数は原則14回ですが、自治体によって異なる場合があります。詳しくは、お住まいの自治体に確認されるとよいでしょう。

出産育児一時金

公的医療保険の被保険者およびその被扶養者が出産したとき、保険者に申請すると1児につき42万円が支給される制度です。双子など、多胎児を出産したときは、胎児数分だけ支給されます。

出産手当金

勤務先の健康保険に加入している本人が、妊娠4ヵ月(85日)以降の出産を行い、出産のための休業し、給与の支給がない場合に支給されるものです。支給金額は収入によって異なります。なお、国民健康保険の加入者には、出産手当金は支給されません。

医療費控除

妊娠出産は、原則として病気ではありませんが、その費用は医療費控除の対象となり、一定額を超えた場合は還付を受けることができます。妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用やその通院費用、分娩費用や入院費用、入院の際の交通費などが対象となります。

3.出産に向けて医療保険で備えておくべき?

すべての出産が公的医療保険の対象ではないものの、公的補助制度も活用できるなら、民間医療保険での備えは不要なのではと考える方もいます。出産に向けて医療保険で備えておく必要はあるのでしょうか。

3-1. 医療保険や貯蓄で備えておくと安心

結論からいうと、医療保険または貯蓄で出産に備えておくことが望ましいといえます。確かに、公的医療保険や公的補助制度の活用により、出産にかかる費用を全額で自己負担することはありません。

しかし、個室利用をする際の差額ベッド代や、食事代などは公的医療保険の対象ではないため、自己負担となります。

医療機関における分娩件数の年次推移の図

厚生労働省の調査によると、年々出産における帝王切開での出産の割合は増えています。帝王切開での出産となると、長期入院の可能性もあり、職場復帰に時間がかかる可能性もあります。

先にもふれた通り、出産前後の入院費用のすべてが公的医療保険の対象となるわけではありません。まずは万一の出費に備えてコツコツとお金を貯めておきましょう。ただし、予定よりも妊娠や出産時期が早く、貯蓄が必要金額に達していない可能性も考慮して、医療保険で備えておくと、より安心です。

3-2.女性の入院による損失は大きい

出産に限らず、家族のなかでも女性、つまり妻が入院すると、家計に与える影響が実は大きいということをご存知でしょうか。夫婦共にフルタイムで働いている方であれば、お互いに入院するなど万一のことがあれば、収入面に支障が生じることはわかりやすいと思います。そのため民間医療保険で備えているというケースも多いでしょう。しかし、専業主婦(夫)やパート勤めをされている方が入院したとき、家計に影響がないと考えるのは間違いです。

日頃、専業主婦(夫)やパート勤めをされている方で、主に家事や育児を担っている方が入院すると、家事や育児の勝手がわからない夫や家族は、右往左往する可能性があります。その結果、外食が増えたり、クリーニング代が必要になったりと、日頃は妻がいるからこそできている家事を外注するケースが増えてしまうことが考えられます。

幼いお子さんがいらっしゃる家族においては、保育所や託児所などの預かり施設への支出が増える可能性や、その送迎のために夫が残業を控える必要も出てくる可能性もあります。近所に実家があり、家事やお子さんの預かりをお願いするにしても、関係を良好に保つために、応分の謝礼を考える必要もあるかもしれません。

また、妻がフルタイムで働いている方であれば、出産前後に育児休暇や有給休暇等をとることもできます。しかし、パートでお勤めの方は、制度があっても使いづらいというケースもあるため、収入が減少してしまう可能性もあります。

このように、妻が入院すると、普段は生じない支出と収入の減少が発生します。妻が入院した場合を想定し、生じる可能性のある支出と収入減少に対して民間の医療保険でカバーすることも考えておきましょう。

3‐3.医療保険の備えは妊娠してからでは遅い?

出産に備えて医療保険に加入したいと考える方のなかには、妊娠したら検討をスタートすればいいと考える方もいます。しかし、妊娠の経過日数によっては加入の引き受けを断られる場合もあります(妊娠日から27週以内までは引き受けとするケースが一般的)。

また、加入できたとしても、一定期間、妊娠や出産に伴う病気や女性部位に関して、保障対象外となる可能性もあります。先にもふれた通り、出産に限らず、女性の入院による影響は大きいことを考慮して、早めに医療保険の加入を検討しておくほうが望ましいでしょう。

4.まとめ

出産は、思っている以上にお金がかかります。もちろん、活用できる公的医療保険、公的補助制度がありますので、自己負担の軽減を図ることは可能です。しかし、出産はあくまでも育児のスタート。その後の育児にも、お金がかかることを考えると貯蓄の切り崩しはできる限り抑えたいものです。

出産のみならず、女性の入院が家計に与える影響が大きいことも考慮し、妊娠してからではなく、結婚を機に早めの民間医療保険への加入を検討されることをおすすめします。

※上記は一般的な内容です。保険の種類や呼称、保障内容等は商品によって異なりますので、実際にご加入いただく際は商品詳細をご確認のうえご契約ください。

【執筆・監修】

キムラミキの写真

キムラミキ

  • AFP
  • 社会福祉士
  • 宅地建物取引士

日本社会事業大学で社会福祉を学んだ後、外資系保険会社、マンションディベロッパーに在籍後、FPとして独立。現在は、株式会社ラフデッサン 代表取締役として、個人向けライフプラン相談、中小企業の顧問業務をお受けするほか、コラム執筆、セミナー講師、山陰放送ラジオパーソナリティとしても活躍中。

ライター記事一覧 >

チューリッヒ生命カスタマーケアセンター

0120-680-777

月~土午前9時~午後6時 ※日曜・祝日は除く

保険に関するご質問・ご相談など
お気軽にお電話ください。
専門のオペレーターが丁寧にお応えします!

専門のオペレーターが丁寧にお応えします!