60代・70代の高齢者世代でも生命保険に入るべき?

掲載日:2023/03/06

老夫婦がウォーキングしている画像

60代・70代は年金生活に入るうえに、健康や死亡のリスクが高まってくる世代。経済的不安を感じ、「リスクに備えるなら生命保険」と対策を絞り込む人もいるかもしれません。

しかし高齢になってから生命保険へ加入すると保険料が割高になることがほとんどです。

また、家族のために備えていた高額の保障が家計の負担になることもあるかもしれません。保障と保険料のバランス、そして保険料と家計のバランスから、本当に加入すべきなのか慎重な判断が必要になります。

この記事では、高齢者の生命保険の必要性と、現在加入中の保険の見直し方法や保険を選ぶ際のポイントについて解説します。

◆はじめに

生命保険と死亡保険は同じものととらえている人が多く、生命保険が死亡保険を指す言葉として使われることがあります。その実情を踏まえ、この記事では生命保険を死亡保険と定義して解説します。正確には、死亡保険は生命保険の一種であり、「生命保険=死亡保険」ではないので覚えておきましょう。

この記事のポイント

  • 子どもが独立したタイミングで保険の見直しが必要
  • 新たに保険加入を検討するなら、死亡整理資金の用意や相続対策をしたい人

1.60~70代からでも生命保険に入るべき?

60〜70代は、「妻/夫がひとりになったあと、お金で苦労しないだろうか」と生活費が心配な人も多いと思います。

現役世代に比べて子どもが自立した高齢世代の方の生命保険の必要性は低くなります。生命保険は死後に保険金が給付されるものなので、子どもや配偶者に負担をかけずにお墓代やお葬式代などの死亡整理資金を用意しておきたい人や、相続対策をしたい人が加入を検討するとよいでしょう。

高齢になるほど死亡リスクや健康リスクは高まりますが、手厚い公的保障のおかげで大部分がカバーできます。さらに、退職金、iDeCoをはじめとする私的年金、貯蓄などプラスαの資金があれば、万一のことがあっても賄うこともできます。

生命保険を検討する場合は、家計を圧迫しないか、保険料を最後まで払い続けられるかを最優先事項として、保険の加入を検討してみてください。

この章の最後に、高齢者が検討することの多い、死亡保険・医療保険・認知症保険の違いを確認しておきましょう。

死亡保険・医療保険・の違いの違の違い

死亡保険は本人が死亡したあとの「遺された家族の生活」を守るために活用するもの。一方で、医療保険と認知症保険はどちらも生きている間のリスクに備える保険であり、「本人と家族の生活」を守るために活用するものです。

このように性質・目的が大きく異なるため、どのようなリスクのために備えがほしいのかを明確にし、不要な保険に加入しないよう注意しましょう。

2.新たな保険の加入を考える前に見直しを!今加入している保険は本当に合っている?

保険の加入を考える前に、まずは今入っている保険の見直しをすることが大切です。次のような流れで現状のチェックと見直しを行ってみてください。

1.現在の収入・支出、預貯金の額を把握する

2.加入中の保険の種類、保障内容、保険期間、保険料を再確認する(例.医療保険の日額や特約は適切か、定期保険/終身保険でよいのか、保険料が負担になっていないか、などをチェック)

3.不要(過度)な保障があれば減らす

4.ご自身の死後、家族が資金不足になる可能性がある(または資金不足への不安が大きい)場合や、死後の資金準備をしたい場合、生命保険だけに頼るのではなく、貯蓄を増やすことで補えないかを考える

①働いて収入を増やす

  60歳以降も、在職老齢年金+給与・賞与の合計月額が47万円以下であれば働いても年金額は減らされません

60歳以降も、在職老齢年金+給与・賞与の合計月額が47万円以下であれば働いても年金額は減らされません

②年金の繰下げ受給(月当たり+0.7%の増額率)で受取れる総額を増やす

5.貯蓄を増やすだけでは準備が難しい場合、生命保険を検討する

 (何歳までにいくら払えるか、毎月の支出が家計を圧迫しないかなどを確認)

4においては、①、②どちらか一方、もしくは両方を組み合わせることで貯蓄が作りやすくなります。何にでも使える貯蓄がある安心感は大きいので、おすすめしたい方法です。

冒頭でもお伝えしたように、高齢になってから生命保険へ加入すると保険料は高額になります。貯蓄で賄える可能性もあるので、まずは貯蓄をどこまで増やせるかを確認してみましょう。そのうえで、新たな保険の加入を検討することが大切です。

3.高齢者世代が生命保険を選ぶ際のポイント

60~70代が生命保険を選ぶ際には、目的の整理と目的に合わせた適正保険金額を知る必要があります。

まず、葬儀やお墓代などの自身の死後の整理資金を用意しておきたいなら、保険金は200~300万円が目安です。

葬儀にかかる費用(平均)

鎌倉新書の「第4回お葬式に関する全国調査(2020年)」によると、葬儀にかかる費用の平均は208万円。ここから香典の平均71万円を差し引くと、137万円が実際に手出しになる平均額ということになります。葬儀の規模や内容によっても変わってきますが、葬儀費用の準備としては200万円程度の保険金があれば十分といえるでしょう。

葬儀以外では、お墓を購入するのであれば平均135万円、仏壇の購入には平均73万円、遺品整理を頼むと平均47万円など、必要に応じてかかってくる費用があります。準備しておくべき費用があれば、200万円に必要最低限を意識して金額をプラスするようにするとよいでしょう。

次に、相続対策が必要な場合は、生命保険の非課税枠「500万円×法定相続人数」(※1)の活用を検討しましょう。法定相続人が2人の場合、生命保険金1,000万円までは非課税扱いになります。つまり、預貯金を生命保険に変えるだけで節税できるということです。非課税枠の上限を目安に保険金額を設定するとよいでしょう。

(※1)相続税における生命保険の非課税枠を適用するためには、契約者・被保険者が被相続人、受取人が被相続人以外(子や孫など)になるように契約する必要があります

そもそも相続税には基礎控除があり、財産が「3,000万円+600万円×法定相続人数」までは税金がかからないようになっています。財産の総額がこの基礎控除以下であれば、新たに生命保険に加入しても節税効果はありません。ただし、生命保険金は死亡した人の財産ではなく受取人の財産となるため、遺産分割の対象になりません。たとえ節税効果がなくとも、「特定の人に特定の金額を遺したい」という要望がある場合には生命保険が有効です。

加入を検討する際には、「定期保険」にするか「終身保険」にするかも重要です。定期保険は一時的に保障がほしい場合に適し、終身保険は一生涯の保障が得られます。

定期保険と終身保険種違い、払込期間の種類類

終身保険の支払い方には、被保険者が死亡するまで保険料を支払い続ける「終身払い」と、保険期間より短い期間で保険料を支払い終える「短期払い」の2種類に分けられます。短期払いの場合、保険料を支払い終わったあとも保障は一生涯続くのが特徴です。

定期保険・終身保険のどちらを選ぶべきかは、いつまで保障を継続したいのかによります。死亡整理資金の用意や相続対策に活用するのであれば、基本的に終身保険を選択することになるでしょう。

しかし、保険料と家計の兼ね合いから、終身保険の保険料では高すぎて支払いが難しいというケースも。その際は、短期間の定期保険で万が一の保障を確保しておき、得られた猶予期間を利用して、不動産や有価証券の売却などで資金を作るという手もあります。ただし、定期保険の場合、払い込んだ保険料は全て戻ってこないので、それでも加入するのが最善かよく考えましょう

4.持病があっても生命保険は入れる?

「引受基準緩和型」や「無選択型」の保険なら、持病があっても入りやすくなっています。それぞれ次のような特徴があります。

・引受基準緩和型(限定告知型):告知項目が少なく加入条件が通常の保険よりも緩い

・無選択型(無告知型):告知不要で基本的に誰でも加入可能

通常の保険・引受基準緩和型保険・無選択型保険の比較

「引受基準緩和型」や「無選択型」の保険は、どちらも通常の生命保険よりも保険料が高く(通常の保険<引受基準緩和型<無選択型)、それほど大きな保障は付けられません。持病があっても入りやすいというメリットがある反面、保険料と保障においてデメリットを持ち合わせていることを理解しておく必要があります。

入りやすさだけで飛びつかず、加入者サイドのマイナス面を許容できるかどうか、本当に入る必要があるのか、慎重に判断してください。

5.まとめ

生命保険は、一般的に加入時の年齢が上がるほど保険料が高くなっていきます。若いときのように保険にお得に加入するのは難しくなることを理解しておきましょう。60代・70代が保険への加入を検討する際は、「社会保障や退職金、私的年金や貯蓄などによるこれまでの備え」だけでは本当に資金が足りないのか、再確認することが大切です。

たとえ割高でも生命保険への加入が有効なのは、「死亡整理資金を遺したい人」と「相続対策をしたい人」です。特に、預貯金を生命保険に変えるだけで相続税を減らせる可能性があるため、財産が多い人は相続対策のひとつとして生命保険の活用を検討してみましょう。

※上記は一般的な内容です。保険の種類や呼称、保障内容等は商品によって異なりますので、実際にご加入いただく際は商品詳細をご確認のうえご契約ください。

【執筆・監修】

さくま みどりの写真

佐久間 翠(さくま みどり)

ファイナンシャルプランナー/ライター。証券会社のオペレーターや生命保険会社でファイナンシャルアドバイザーを務める。その経験を活かして、2016年からフリーライターとしてマネー系記事を中心に執筆。

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