「現在のがん治療」に関する講演
【講師プロフィール】
東京大学医学部付属病院 准教授 中川恵一先生
東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部放射線医学教室、社会保険中央総合病院放射線科、東京大学医学部放射線医学助手、専任講師を経て現職。東京大学医学部付属病院緩和ケア診療部長兼任。厚生労働省がん対策推進企業アクション議長なども務める。
中川先生には、最新のがん治療や早期発見の重要性について、わかりやすくご講演いただきました。
免疫ががん細胞を攻撃することを助ける「免疫チェックポイント阻害剤」
まず、現在話題になっている「免疫チェックポイント阻害剤」についてご説明されました。がんの治療法は、手術と放射線治療と抗がん剤という、大きく3つの方法に分かれます。これに加えて、最近注目されているのが「免疫にアプローチする治療法」と中川先生はおっしゃいます。体の中で作られるがん細胞は、免疫の働きにブレーキをかける物質を出して抵抗してきますが、このブレーキを取り除くのが、ノーベル生理学賞の受賞で注目された「免疫チェックポイント阻害剤」です。「日本でも一部のがんへの免疫チェックポイント阻害剤使用に公的保険が適用されるようになっています。」と、現状についてもご説明されました。
がん細胞に、より正確に照射する精度が高まっている放射線治療
次に、中川先生はご自身の専門である放射線治療についてお話されました。先生は「放射線治療も技術が進んでいます。」とおっしゃいます。従来の放射線治療では、がん細胞以外の正常な細胞まで照射してしまうという課題がありました。しかし、先進の技術では最大5mm程度の誤差で、がん細胞に正確に照射することが可能になっています。特に早期の肺がんなどには有効な方法となっています。さらに、「日本では、手術による治療が圧倒的に多かったのですが、こうした入院の必要がない治療法にも選択の幅が広がっています。」と現在の治療法についても触れられていました。
がんの治療は敗者復活戦の無い一発勝負
そして、がん治療に対しての心構えについてお話いただきました。
現在、日本においては年間100万人が「がん」に罹患し、38万人が死亡に至っています。「一方、医学の進歩によって、多様な治療法が生み出され、今は、がんの治療をしながら生きる時代です。」と先生はおっしゃいます。「がんの治療は、敗者復活戦の無い一発勝負。適切な治療を選択するためには、正しい知識を得ることが大切です。」と強調されます。最近、中学や高校の学習指導要領にも、がんに関する教育が盛り込まれました。こうした中から、今後正しい知識が備えられていくことへの期待を述べられました。
早期発見への心がけと適切な治療法を選択できる知識を
最後に中川先生は次のようにまとめられました。
「どんなに生活習慣に気を付けていても、誰もががんに罹患する可能性があります。日本は欧米に比べてがんの死亡率が高く、その原因は早期発見への意識やがんに対する知識が低いことにもあると言われています。手術や放射線治療、抗がん剤に加え、免疫にアプローチする治療法も研究が進んでいます。最新の治療法などの情報を知るとともに、自身の異変にいち早く気づくための心がけと行動が大切です。」
がんサバイバーFPがお伝えする“がんとお金”のリアル
【講師プロフィール】
ファイナンシャルプランナー 黒田尚子先生
立命館大学法学部卒業。日本総合研究所在職中にFP資格を取得した後に独立。2009年に自身が乳がん告知を受けた体験をもとに、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動に注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクトのファシリテーターなども務める。
黒田尚子先生には、ご自身のがん罹患経験も踏まえて経済的な備えの必要性をご講演いただきました。
医療の進歩によって長期化する治療費の不安や仕事との両立に悩む人も
「がんの治療には、どのような備えが必要なのでしょうか。」と黒田先生は講演を始めました。実際にがんに罹患した患者さんから、「いつまでどれくらいのお金がかかるのか」「今までのようにフルタイムでは働けなくなることでの収入の減少が心配」「自分がどんな制度が使えるかわからない」といった相談を多く寄せられるそうです。また、「医療の進歩によって治療の選択肢が増え、生存期間が長くなっていることは喜ばしいことですが、治療の長期化により仕事との両立に悩む人も増えています。」と先生はご指摘されました。
早期発見と適切な治療、中長期のマネープランでがんに備える
まず、先生は治療費について次のようにご説明されました。「治療費は、がんの種類と進行度、さらに、どこまでの治療を望むかによって大きく異なり、かかるお金はケースバイケースです。」そして黒田先生も、早期発見の重要性を強調されます。「注目すべきこととして、早期に発見し、適切な治療ができれば治療費は抑えられ、再発リスクも低減するという点です。」そのためにも、「まずは、定期的に適切な検診で早期発見に備えること。そして、もし罹患して治療が長期化した場合でも、不安にならないための中長期のマネープランが必要です。」とおっしゃられていました。
社内制度・公的制度を活用して仕事を続けながら治療をする選択を
さらに黒田先生は、「がん治療費などの一時的な支出の増加よりも、がん罹患後に収入が経常的に減少することの方が、ライフプランへのダメージは大きくなります。そのためには、安易に仕事をやめないことが大切です。」と継続的な就業の大切さについてご説明されました。「治療と仕事の両立を支援するためのガイドラインや診療報酬の改定など、国や自治体の取り組みも進められています。社内制度や、公的制度を上手に活用しながら仕事を続けることを検討しましょう。」と、そのために知っておくべきことについてもご解説されました。
早期発見への心がけと適切な治療法を選択できる知識を
黒田先生も、「がん治療について正しく知識を持つこと・準備をしておくこと」が大切だとおっしゃいます。「がんに罹患することでの精神的負担は、経済的な不安の解消と、納得できる治療選択によって軽減され、経済的な問題や情報の問題には備えることができます。がんに対して正しい知識を持ち、医療費や収入の補てんについては公的制度でどのような制度が使えるかを確認した上で、足りなければ預貯金や民間保険で備える。この順番が重要です。また、公的制度などは頻繁に改正が行われるので、誰に相談できれば最新の情報が得られるかを知っておくことが大切です。」とおっしゃられていました。
各セミナーの後には、中川先生、黒田先生によるパネルディスカッションが行われ、がんに向き合っていく上で大切な心がけについて、ご経験を踏まえたお話をいただきました。
セミナーの様子
チューリッヒ生命カスタマーケアセンター
0120-680-777
月~土午前9時~午後6時 ※日曜・祝日は除く
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